脈絡

読み難い

笑顔の話

 

本当の笑顔ってなんだろうなぁと、思うことが増えた。わたしは最近よく笑うようになったと自覚しているし、それは別に悪いことではない気がしている。けれどなんでだろうか疲れるし、時々ふっと虚しくなる。

 

小学生の、あれはたしか4年生の終わり頃か5年生の初め頃だったと思うのだけれど、その頃からわたしは笑うのをやめていた。誰かが冗談を言ってみんな笑っていても、クラスメイトが遊んでいても、わたしはぴくりとも笑わないように、それはそれは努力していた。それは悲しい笑いでしかないと思った。彼らはわたしのことを笑いにしていることもよくあったし、大抵は彼らの笑いはわたしのそれとは違った。一枚の薄い布、或いは分厚い壁か何かで彼らとわたしの空間は仕切られていて、なんだかとてもつらかったし、彼らと笑うわたしがどうしようもなく嫌だった。

 

中学生になって、2年生くらいから少し笑っていた気がする。でも3年生になると、また部活とか人間関係とか、わたしがいろいろ下手くそすぎて笑おうなんて思わなくなった。笑ってる余裕なんてなかったなぁと、そう思う。別に受験は大したことなかったし、それがストレスになったとは考えてないけれど でも中学生の頃は大体ずっと体がしんどかったし疲れが抜けなかった。大変だったと今でも思う。

 

捻くれていた。小学校中学校と同じメンバーで過ごしていたからなのかもしれないけれど、いまやっと自覚した、同じ人とずっといられないっていうことを知らなくて、それでなんでだろうなんでだろうと思っていたのかもしれない。

 

高校に入ったらちょっとやりやすくなったけれど、それもまた一瞬の話だった。けれど、その始めの頃に、わたしは笑って居ないといろいろ不具合があるのかもしれないと気付いた。こんな大人数のクラスは初めてだったし、怖かったから、笑って過ごしてとりあえず話しかけてくれる人がいれば良いやと思っていた。11人に無視されるのは別になんとも無かったけれど、流石に39人にされたら辛いだろうなって思ったり、知らない大きな学校の噂を聞いたりして怖がってた。

 

人に話しかけられたらとりあえず笑顔、話しかける時も笑顔、自己紹介、授業中に先生に当てられて発言するとき、勉強を聞かれて教える時、全然笑顔、笑顔、笑顔でいればなんとかなると思って必死でやっていた。そうしたらいつのまにか、なんでもないときにも一人でいるときにも笑っていた。別にそれが悪いなんて思わないし、それでやりやすくなったこともあった。笑顔と一緒に心もちょっと丸くなって、許せるようになって、優しくなった気がした。

 

けれど、ふと思ってしまった なんでこうやって毎日にこにこしてるんだろうと。つらいとか嫌なことがあっても、嫌いな話でも苦手な人とでも、とりあえず毎日笑ってたし、どんなことが来ても笑って対応していた。それでも、いつのまにか、疲れてしまった。全部全部、作っていたのだろうかと。楽しかったし、嬉しいことも増えたし、良いことのように思えていたけれど、どうしてこんなに虚しいのだろう。いま、わたしは笑うことにかなり慣れてしまっていて、それが普通の顔のようになっているけれど、それは絶対に普通の表情ではなくて。笑うことで我慢しなければならないことも増えたと思う。許すことでわたしが負担することも増えた。笑顔は楽しいことをたくさん連れてきたけれど、その分向こうの虚無もこっそり隠れてついてきた。

 

とんでもなく疲れる。わたしは笑うのをやめようと思って、心がけてみたけどそれは、それは思っていたよりもう難しいことになっていて。嫌なことでも話したくない人でも、なにかの話を振られたらさっと笑顔をつくること。染み付いていて離れなくて、どうしようもなくなっていた。

 

本当に笑顔だったなら、きっと疲れないのだろう。わたしは無理に笑顔を作ってしまったから、それがいろいろ不具合をもたらしていたのだと。だって楽しいと思って笑顔で聞いていた話の後は全然疲れなかった。楽しい時の笑顔はそうでないときのそれとは違う。

だからわたしは楽しいことだけしていたくて、そうやって守っていきたいのだと思う。守っていかなければならないのだと思う。このままだと壊れてしまうと思って、もっと大切にしたいのだと思う。好きな人と好きな話をしていたい。心を守らなければならないし、それによってわたしの体も守られる。そうしたら大好きな人ともっと居られるだろうし、大好きなことを続けられるだろう。それに付随した笑顔が自然にうまれたら、それはいちばん良いことなんだろう。

 

生きていくのが下手くそなんだとつい最近気付いて、まあ遅すぎたと思うけれど、これからなんとかなるかもしれないし。当たり前のことに気付くのが遅くて、どうしようもなくなっているけれど ゆっくり変えていけばなんとなく気付かれずに変わっていけるかな。

 

疲れて笑えなくなる前に笑うのをやめて笑って居られるようになりたい。